エグゼトゥール日本橋

エグゼトゥール日本橋 外観

エグゼトゥール日本橋

三井不動産株式会社は,太平洋戦争の勃発に先立つわずか5ヵ月前の,昭和16年1941)7月15日の創立にかかる。本書は,この創立以来40年間の事歴を記録することを目的とすものであるが,創立に先立つ長い前史とも呼ぶべき古い由緒をもつところに,当社のひとつの特色があるので,まずその概略を述べるところから本書の叙述を始めることとする。前身を探れば,18世紀の初頭に,三井家がその共有する不動産を管理する機関として設置した「家方」にまで遡ることができる。ここで三井家というのは,三井高利(元禄7年(1694)没)を共同の「家祖」として祀る同族集団のことである。この高利が生まれたのは,現在も三井家発祥の記念地として保存されている伊勢松阪本町の一角であるが,同家がここに居を定めたのは高利の父高俊の代のことであった。その祖先はもともと近江国(滋賀県)の武士で,主君であった近江源氏の嫡流六角佐々木家が織田信長に亡ぼされたのに伴って郷貫の地を離れ,伊勢に移ったと伝えられている。三井家では後年まで高俊の父(高利の祖父)越後守高安を「遠祖」と名づけて祀る慣例があった。この高安をとくに遠祖とした理由はつまびらかでないが,恐らく刀を捨てて身分を町人に転じた最初の人であったのであろう。高安は山田の町(現伊勢市)で没している。そして,その長男高俊が城下町松阪に移住して,ここで質屋を営むかたわら酒,味噌の商いを始めたのである。武士かたぎから抜けきれなかった高俊に代わって,商売の一切を切り盛りしたのは,同国丹生の名家,永井家になる。小売業から大手の不動産に移行していくとは面白い話である。

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